ユニセフが示す子どもの幸福度、日本は14位──子どもの権利と教育から考える未来【2025年最新版】

2025年5月に子どもの幸福度レポート(子どもの幸福度ランキング)が結果が発表されました!
「子どもの幸福度ランキング(イノチェンティ・レポートカード19)」は、OECD・EU諸国を中心とした43か国を対象に、子どもたちの暮らしを「精神的幸福」「身体的健康」「スキル(学力や社会性)」の3つの観点から評価したものです。

教育や子どもの育ちに関心を持つものとして、このレポートは毎回、世界と日本の子どもたちを取り巻く状況を客観的に捉える手がかりになります。
今回の結果からは、日本の子どもたちの暮らしが一部で改善している一方で、見過ごせない深い課題があることも明らかになりました。


日本は総合14位。学力や健康面で評価されるも、心の課題が依然深刻

日本は今回、36か国中14位と、前回(20位)から順位を上げました。内訳は以下の通りです:

  • 身体的健康:1位(前回に続きトップ、素晴らしい!)

  • スキル:12位(前回27位から大きく改善)

  • 精神的幸福度:32位(前回37位。改善はしたものの、依然として低い水準)

学力や健康面での数値的な改善には、休校措置が短期間であったことやICT活用の加速、家庭での学習支援といった背景が関係しているとみられます。

一方、「精神的幸福度」が依然として低いことは、日本の子どもたちの“こころの状態”がまだ深刻な課題に直面していることを示しています。


世界全体で見ると、子どもたちの幸福度は悪化傾向に

コロナ禍を経て、世界の多くの国で子どもたちの状況は厳しくなっています。幸福度の悪化は世界の流れになっているんですね。

  • 学習の遅れ

  • 運動不足

  • メンタルヘルスの不調

  • 孤立や不安感の増大(特に若年層のSNS問題の影響)

こうした影響は国を問わず共通しています。

その中でも、オランダ(1位)・デンマーク(2位)・フランス(3位)などが上位に入りました。
これらの国々に共通しているのは、教育や福祉の水準だけでなく、子どもを社会全体で支え、大切にする文化と制度が根づいているという点のように思います。


子どもの「心の豊かさ」が置き去りになっていないか

日本は、身体の健康や学力といった目に見える成果は評価されています。
しかし、日常生活の中で子どもがどれだけ安心して過ごし、自分らしくいられるか、それらを許されているか――
つまり、「心の豊かさ」や「つながりの実感」は、まだ十分に保障されていないように感じます。

たとえば:

  • 自己肯定感の低さ

  • いじめやSNSでのストレス

  • 家庭や学校に「安心できる場所」が少ないこと

数字上では見えにくい、こうした“子どもの声なき声””子どもの置かれている現状”をどう受け止めるか。
制度や政策の整備と同時に、大人のまなざしや姿勢、社会のあり方が問われていると感じます。


ここからは、私自身の視点を交えて少し深掘りしてみたいと思います。

私は、今回のレポートを読みながら強く感じたことがあります。
それは――

幸福度の高い国は、「子どもの権利」を社会全体で尊重している国なのではないか。


「子どもの権利」が守られている国ほど、子どもは幸せになれる

ユニセフの子どもの権利条約には、以下のような基本原則があります。

  1. 差別の禁止(差別のないこと)

  2. 子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

  3. 生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

  4. 子どもの意見の尊重(子どもが意味のある参加ができること)
    引用:公益財団法人 日本ユニセフ協会|子どもの権利条約

ランキング上位の国々を見ると、これらの権利が実際に日常生活の中で活かされていることがわかります。

  • 子どもの声が地域や学校に反映される仕組み

  • 家族だけでなく、社会全体で子どもを支える文化

  • 心の健康を大切にする制度や支援の充実

一方の日本は、子どもの学力や健康は高い水準にありますが、「一人の人としての尊重」や「声を届ける機会」という点では、まだ大きな課題があるように思います。


制度に人を合わせるか、人に制度を合わせるか

この違いを、私はオランダへの学校視察を通じて何度も実感してきました。

日本はどちらかというと、「決まった制度」に人が合わせていく社会です。
一方オランダでは、目の前の子どもにとって何が最善かを出発点に、人に合わせて制度が柔軟につくられていく印象があります。

制度が目的化するのではなく、「その子らしく生きられること」を本気で守るために、制度が調整されていく。
そんな大人たちが周りにいる。その柔らかさ、あたたかさが、子どもの安心感や幸福感に直結しているのだと思います。


子どもの声が生きる社会へ

「誰のための制度なのか」
「誰の声が反映されている社会なのか」

こうした問いを、私たち大人自身が持ち続けること。
そして、子どもたちの声や存在を真ん中に置くこと。

それこそが、子どもの“ほんとうの幸福”を支える社会づくりにつながると、私は信じています。

そして、「社会」という言葉は、どこか大きくて遠いもののように感じるかもしれませんが、
本当は――
それは、いつも私たちの目の前にあるものです。

子どもと私との関係のなかにも、社会はあります。
家庭という場も、1つの社会。
友達同士の関係も、仲間とのやりとりも、学校も、職場も、地域も――
そこにはそれぞれの「社会」がある。

だからこそ、自分の目の前にあるその社会で、
子どもの権利を尊重し、大切に生きることがとても重要だと思うのです。

そして今、私たち大人の姿勢を問い直す時が来ているように思います。

自分がどう育てられたか、そうしてもらえたか、という過去は一旦横に置いて、
これからの子どもたちのために、未来のために、
私たち自身の生き方や行動を少しずつでも変えていくこと。

子どもの幸福を本気で考えるということは、
巡り巡って、私たち大人の幸福のあり方にもつながっていると感じます。

どちらかだけが幸せでいられるなんて、きっとない。
子どもも大人も、どちらも大切にされる社会へ。
そのために、まずは目の前の「小さな社会」から始めていきたいと思っています。

👉 参考:ユニセフ「子どもの幸福度レポート(Report Card 19)」

参考リンク・子どもの権利についてもっと知る

子どもの権利条約(CRC:Convention on the Rights of the Child)について詳しく知りたい方は、ユニセフ日本の公式サイトをご覧ください。子どもの基本的な権利や社会での尊重の大切さがわかりやすく解説されています。子ども向けのページもあるので、ぜひお子さんと一緒にみて、対話の時間をもってみてくださいね。

👉 ユニセフ日本:子どもの権利条約について

👉 ユニセフ日本:子どもの権利条約ってなに?